『災厄』/周木 律/角川書店(2014年5月発行)
【作品概要】
四国のある町で住民全員が死亡するというとてつもない事件が起こった。この事件は隣接する集落に次々と拡大していった。厚生労働省の斯波参事官はウイルスが原因と主張するが、政府首脳を中心とするテロ事件説に押し切られてしまう。真実を求めて斯波参事官の苦闘が展開される。
【あらすじ】
高知県の山間部にある杉沢村で事件がはじまる。この集落に住んでいた3世帯5人の住民と飼っていた犬、猫、家禽のすべてが死んでいた。当初、これは毒きのこによる集団中毒として処理されていた。
しかし、翌日、別の集落で7人、次の日も二つの集落で11人が死亡した。隣接する南土佐村や北尾町でも被害が出始めた。死者の数が3桁に達し国会でも取り上げられるようになり、政府は何らかの対策を講ずる必要に迫られた。
金平官房長官、楡副官房長官、家持厚生労働大臣の政府要人と厚生労働省から田崎局長と斯波参事官を交えて緊急会議が開かれた。伊野塚警察庁長官が「政府に対する化学兵器などを使用したテロ事件」と断定した。
一方、斯波参事官は「新型のウイルスか細菌の感染症である」と主張した。死亡者が7000人近くにのぼり、高知県の半数の地域に被害が出ている中でも政府はテロ事件説を変えなかった。感染症であることを証明するためには病原体を手に入れる必要を感じた斯波参事官は四国に飛んだ。四国は南土佐村を除きほぼ全域が危険区域になっていた。
斯波参事官は危険を冒して病院の遺体から症状を記録したカルテと検体を持ち帰り調査した結果、サリンが被害を起こした原因物質であることが特定された。
感染症の証明に失敗した斯波参事官は、埼玉県にある関東厚生局に左遷された。広島の検疫事務所に勤務する同窓の宮野から驚くべきサリンの生成とその伝播の過程を告げられる。
宮野と斯波の二人は、事件の究明に向けて立ち向かっていく。
【感想】
政府のテロ事件説と斯波参事官の感染症説に絡んで様々な出来事が展開されていくが、事件の真相がなかなか明らかにされない。しかし、最後に衝撃のラストが待ち受けていた。感染症を題材としたミステリー医療小説として楽しめた。
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