「先天的な異常?」

「ああ、何だったかな。胎内での分化の異常といったところか。俺も詳しく知らないんだ。うまく説明できる気がしないし。後で捜査資料読んどけ」

「そんなこと言って、藤堂さん分かってないんじゃないですか」

調子に乗る行沢の腹部に軽く肘を入れてやる。

「ああ。月島のアリバイの裏を取りにいく」

もだえているのを横目に宣言すると、苦しそうにしながらも反駁をしてくる。

「月島翼と被害者が呼んでいただけで、犯人と決めつけるんですか」

「いや、そういうわけじゃない」

藤堂は短く答えた。瞼に力を込めて眼球を閉じ込めるように目を閉じる。

「ではなぜ彼を重要視するんでしょう。確かに気になる部分は多いですが、その感じだとアリバイがあるんですよね」

「ああ、まだ調べてないからはっきり言えんがな。俺としてはあの月島少年はシロだ。だから疑いを晴らしてやりたいんだ」

行沢は藤堂の顔を、真意を測るように正面にとらえた。

「珍しいですね。疑いを晴らしてやりたいなんて」

「そんなこともないと思うが」

「じゃあなんで固執するんですか」

 

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