どんな組織でも大きく育っていく時に、組織の上に立つということの苦しさ過酷さは、「私心なく」ということの難しさを物語っていると思います。意識していなくとも、人知れず己の心に住む鬼、そして、それに負けていく弱き心、組織が一つの大きな力となっていくときに、その圧力に、屈してしまうのでしょうか。これも悲しい人間の姿であるように思えてなりません。
人の心を、「私心のないもの」に蘇らせていく力となるものが大事であり必要であると、痛切に思うのです。人は誰でも自分が一番かわいいと思うものです。大事な自分の願いや思いが中心になり、私心に執着し、自己中心となり周りが見えなくなります。
昨今の社会の実相(実際のありさま)も、また然りと言えるようです。
松下幸之助氏の著書『素直な心になるために』〈PHP文庫 PHP研究所(二〇〇四年初版、三十頁)〉の中で、
「素直な心というものは私利私欲にとらわれることのない心、私心にとらわれることのない心である。一つには大宇宙を司る根源と自然の理に対する感謝、もう一つは自分が何にもとらわ れない素直な心で、自然の理に従っているかどうかを反省すること」と述べています。
その本を読んだ時、スゴイ! と思いました。
心とは奥の深い、ちょっとやそっとでは覗き見ることのできない、摩訶不思議なものなのかもしれません。
○その心 人である身の人こころ いかに導く憐れなりける(永久作)