3年生になってから入ったゼミでは、アジア諸国の経済発展を中心とした国際関係論について研究をしていた。ゼミの勉強が面白くなったために成績は伸びたが、1・2年生の頃はほとんど大学の勉強には身が入らなかったので、GPAは2の前半程度だった。
3年生になってしばらくたった頃から、周囲が就職について動き始めていたので、吉岡も就職についていろいろと調べ始めていた。吉岡は国際関係、特にアジア諸国に興味を持っていたので、いわゆる一流商社に入って、特にアジアの途上国とのビジネスに携わりたいと考えていた。その件で大学のキャリアセンターへ相談に行った。
「うちの大学からこのレベルの商社に入社したのは、過去10年間で3人ですね。2人は体育会の運動部の主将で、1人は同じく体育会系の部員で、全国大会で準優勝した者です」
「OB訪問したいのですが、紹介していただけますか」
「いいですけれど。誰がいいですか」
「どなたでも」
「では、直近で5年前にJ商事に就職した剣道部の元主将を紹介しましょう」吉岡はさっそくアポを取り、その人物と面会した。
「OB訪問を受けたのは、実は初めてだよ。うちの大学からはこの会社にはなかなか入れないからね。なぜうちを受けたいと思っているのかい」
「英語が得意なので、グローバルな舞台で仕事をしてみたいと思ったからです。TOEICは870点です」
「大したものだね。でもそれはあまり入社試験の際には強みにはならないよ。要はW大学やK大学の学生に比べて、君にあるものは何かをアピールしないとだめだな。これらの大学にも英語ができる連中はたくさんいる。なんといっても、英語なんて、この会社に入って3年も鍛えられれば、誰でもそこそこはできるようになる。うちの大学の学生がこの会社を受けるなら、体育会で活躍したか、GPAが3近くないと、書類選考にすら通らないだろうな」
「……」
「それにW大学やK大学は社内にOB会があるから、そこでのネットワークが結構有利に働いているらしい。先日も退職者を含めた大規模なOB会が、母校で開かれるなんて話をしていたよ。俺なんかはそんなものからは蚊帳の外だからな。たまに疎外感を覚えることはあるよ」先輩は続けた。
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