フォイビダスは裏切り者たちの誘いに応じ、その夜、スパルタの将兵を引き連れ、闇に紛れてカドメイアに侵入すると、デメテル女神の祭典を蹂躙(じゅうりん)し、祭りに参加していた女たちを、有無を言わさず生け捕りにした。

「ひいい! 助けてー!」

女たちの悲鳴が夜空にこだました。

「なにごとだ?」

テーバイ市内の家々からは、悲鳴を聞きつけた男たちが武器を手に駆け出したが、カドメイアを占領したスパルタ兵は、非力なテーバイの女たちに剣や槍を突きつけると、

「逆らえば、女どもの命はないぞ!」

怒声でテーバイ市民を脅迫した。

「おのれ。女を人質にするとは、卑怯なっ!」

テーバイの男たちはスパルタ兵の暴挙に憤ったが、

「おとなしく降伏しろ。スパルタ軍に従った方が、身のためだぞ」

寡頭派のレオンティアデス、アルキアス、フィリッポスが、居丈高に命令する。

「きさまら。スパルタに国を売ったのか?」

「裏切りもの!」

テーバイの男たちは売国奴たちを睨みすえ、声を限りに罵ったが、妻や母や娘を人質にとられた彼らにはスパルタ軍に降伏する以外に選択肢はなかった。寡頭派の領袖(りょうしゅう)レオンティアデスとスパルタの将兵は、かくして難なくテーバイを制圧した。