十二月五日(水)

ようやく実家に到着。車から荷物をおろし、レンタカーを返しに行く。その帰りに、無事到着したことを報告しに最寄りの警察署を訪ねると、

「旦那さんと縒りを戻すつもりはありますか?」と聞かれたので、「ありません」と答えると、その表情から決心が固いことを読み取ってくれたようで、

「わかりました。ご主人が来られるようなことがあったら、すぐに警察に連絡して、家には絶対に入れないでください。家に入った時点で逮捕します」

と言われた。

(逮捕するんや!)

警察を出て実家に戻り、カバンの中の荷物を整理する。その際、今さらながらに気づいて後悔したのは、結婚してからずっと毎日欠かさずに付けていた家計簿を、最近のものしか持ってきていないことだった。今後は離婚調停に向けて、資料になり得るものは、すべて弁護士さんに預けることになる。

古い家計簿も、そのひとつになるはずだった。

「あーあ、失敗しちゃった……」

佳奈美にこぼすと、

「うちは大丈夫、全部持ってきたもん」

って……もしかして、お小遣い帳のことか。

そうこうしていると、引っ越し屋さんが到着した。必要最低限のものしか持ち出さなかったつもりだが、置いてみると、三畳を占めるほどの量に。その荷物を見ながら、うんざりしたような顔で、私の父が言った。

「どないすんねん、この荷物。いつまで置いとくんや」

(え……?)

これで落ち着けたかと思ったのに、別に部屋を借りるか、家を買うか、苦渋の選択を迫られる。それからは、仕事探しと弁護士さんに提出する資料づくりに加え、佳奈美と二人で暮らす物件を探す日々が始まった。