「村? 珍しいな」

「そこでは僕は頭も悪くて、弱くて、泣き虫で……劣等生だった。親から名前を呼ばれたことだって、両手の指で数えられる程度。きっと君からしたら、その程度でって思うだろうけど、僕の村はそういう価値感だったから……。そのせいで学校でいじめられてね……でも、そのたびに兄さんが庇ってくれた」

「兄さん?」

「うん。三個上の兄さん。僕よりも優秀で、強いし頭もいいし、子供なのに、大人に引けを取らない、すごい人だった。性格は……まぁまぁ。兄さんは、僕の憧れだった。でも、僕を庇ったせいで兄さんまで悪口を言われるようになった。だから、僕たくさん頑張ったんだ。それで、まぁ平均レベルにまでは上がってきた。でも、それでもダメだった。いつしか学校に行くことすらできなくなった」

「ちなみに、自分より顔がいい奴と付き合うってのは、その時からの夢なのか?」

「あぁ、はい」

「……そうか」

なんとも言えない顔になったログを見て、ジョシュは苦笑いをうかべる。

「あはは……でも……僕が八歳くらいの時だったっけ。『リベドルト』って名乗る奴らが押し寄せてきた。あいつらは、僕たちのことを奴隷にしようとした」

「リベドルト……!? お前、知ってるのか!?」

「え、うん……ログ君もそうなの?」

「俺たちは、そのリベドルトを目指して旅してるんだよ」

「そうなんだ……ログ君もなんだね。あ、話を戻すね。リベドルトの奴らが攻めてきて、でも村のみんなは抵抗して、結果……皆殺し。それで、しばらく泣いてたら、兄さんが来てくれて……一緒に逃げた。そういえば、あの時、不思議なこと言われたな」

『なぁ、ジョシュ……』

『なに?』

村から逃げる途中、兄はさみしそうな顔をして聞いてきた。いつも笑顔を絶やさない兄がこんな顔をするなんて、なにかあったのか、怪我でもしているのか、と少し心配になった。

『もし、俺たちのどっちかしか生き残れないってなったら、どうする?』