【前回の記事を読む】雑談LINEで彼をもっと知りたい…「わー有難うございます。魚座さんですね」どこまでなら…?

Chapter 1

ハイスペイケメン花川流星との出会い

今度会ったら韓国ドラマみたいに、ロマンチックなバックハグをお願いします。そんなとんでもなく恥ずかしいお願いをした事が真由子は気になってしまい、流星からうんと離れてソファの端っこに座り、しかも流星に背中を向けたまま真由子は話し出した。

流星の声が前回と違って枯れたようなハスキーボイスだったので、どうしたのかと訊ねた。「いやーすみません。昨日の夜、新宿2丁目で仲間4人と飲んで、飲み過ぎましたー。ビールを1ケース、ワイン、ウィスキーどれくらい飲んだか覚えてないくらい飲んでしまって……」

ずいぶんと豪快な飲みっぷりだこと……真由子の周りには、今までいなかったタイプの男である。ごく自然に流星からは、新宿歌舞伎町、2丁目など刺激的な夜の街の名前が出てきた。

「流星くんは以前、歌舞伎町でバーテンをされてたんですか?」

「あーそうなんです。大学生の時、3年ほど働いてました。高校卒業して大学に行く時、母から、ウチにはあまりお金がないから自分で学費や生活費をなるべく稼いで欲しい……って頼まれたんで」

「えっ、それで……」

「それで実家を出てから、横浜の祖母が持っている家に住まわせて貰ってバイトしながら大学に通ってました」

「そうだったんだ……」

「そのうち都内に部屋を借りて、歌舞伎町のバーテンとか複数バイトしながら、生活費、学費、全て稼ぎました。大学院を出る頃までには、貯金もけっこう出来てました。本当は外国の大学院に留学したくて、頑張って貯金したんですけど……足りなくて留学は断念したんです」

真由子は、目の前の流星が、急に大人っぽく見えてきた。そんな苦労をして大学院まで出た青年だとは。可愛いまるでアイドルのような容姿の流星から、そんな話を聞くのは意外でしかなかった。

さらに流星は学生時代の話を続けた。

「まぁ、バーテン時代は、夜から夜明けまで働いて、寝ないで学校行って、夕方2時間寝てまた働いていたので、本当は大変でしたけど……」

落ち着いて静かに語る流星に、真由子は何か凄味のようなものを感じた。真由子の初恋の相手も、実家に頼れないのでバイトをしながら国立大学を出たので、流星にそのイメージが重なった。

「子供の考えだったかもしれないですけど……親に、じゃあ自分でやってみるよって出て来たから、後に引けなくてですね……笑……」

「流星くんって可愛い見かけと違って、か弱い所が、これっぽっちもないんだね」ひと呼吸、間を置いて流星が言った。