第一章 出逢い ~青い春~
一
喫茶店へ入ると、入江が手をあげテーブルに招いた。感情のないまま、優子は入江の向かいの席に座った。
「食べていないんでしょ?」と、入江はやつれた優子を見て言った。優子はコクンと頷いた。
「モーニングセットを一つ、お願いします」と、入江が注文をした。しばらくして、トレーが運ばれて来て、トーストと、サラダと、ゆで卵と、ヨーグルトと、コーヒーがのっていた。
「ちゃんと食べて下さい。でないと、また倒れてしまいますよ」
「……色々お世話をおかけして、すみませんでした」と言って、優子は頭をさげた。
「僕の事なら、いいんです。それより食べて下さい」
優子はまたコクンと頷いて、トーストを手にとった。一口かじったが、味は全くわからなかった。
入江に見守られているおかげで、優子はゆっくりとだが、食べ始めた。どれも半分ほど食べて、コーヒーをすすった。
「もう食べないんですか?」
優子はまたコクンと頷いた。入江は、背広の襟を両手で正し、意を決してきりだした。
「こんな時に何ですが、こんな時だからこそ言います。僕と結婚して下さい」