何を言っても無駄なようだ。分かっていないな。

「それじゃ、試しに私を抱いてみる?」

「えっ! 本当ですか。嬉しい! 美樹さんを抱きたいと思って三か月になります。願いが叶う!」

何と言っていいか分からないが、まずは試しに抱いてもらおう。
勢いで、こんな展開になってしまった。後悔している。素敵な年下友人を無くしてしまうのは残念だ。優しく手を繋いでいる。

はぁ~と、ため息をついた。

「美樹さん、後悔しているのでしょう?」

「うん、だって素敵な友人を無くすんだよ」

「でも、ダメです! 僕は抱きます。でも友人は辞めます。僕は友人になるのは嫌です」

「えっ! 私と友人にもなりたくないの?」

「そうです」

「何かショック。私はお友達と思っていたのに」

「今までは友人だった。今からは恋人です。僕の物になるんだ」

「ちょっと、冗談は止めてよ」

「何が冗談に聞こえるのですか」

「今日はお試しでしょう」

「僕には分かる。美樹さんとは体も相性が最高にいい」

「分かっていないと思うから、百聞は一見に如かず」

勇気を出してついていった。

凄いホテルに着いた。手を振り払おうとするが、離さない。一緒にカウンターでカードキーを受け取った。

恥ずかしい。冷や汗が出る。エレベーターで十七階へ。手を放してくれない。部屋に入った途端、抱きしめてきて、キスを。長い、長いキス。

ひ、ひ、久しぶりのキス!

「りょ、涼真君、先にシャワーに入ってきて」

「一緒に入る?」

「えっ! 後で入るわ」

「分かった。先入るね」