第1章 夫婦の問題
(7)世界一孤独な男性
▼「孤高」を賛美する日本社会
日本男性が世界一孤独だと指摘されても、意外と驚きはないかもしれません。「沈黙は金」や「武士は食わねど高楊枝(たかようじ)」、はたまた三船敏郎さんのCMキャッチコピー「男は黙ってサッポロビール」などに代表されるような、「孤高」に憧れ、賛美する文化が脈々と受け継がれているからです。武芸や信仰のために、一人諸国を巡り歩いて修行し、心身を鍛錬した武者修行者や行脚僧のイメージなのでしょうか。
「友人がいない」ことや「人付き合いがない」状態の孤独は、人間関係の煩わしさから離れ、自らと向き合う長い時間の中で、安心と不安を繰り返して、独り身でも前向きに生活できる術を体得できるかもしれません。しかし一方で、世の中には、人と接する機会もない社会的に孤立している人がいます。
地方から都市部に大量の人口が流れ込み、三世代世帯が激減し、核家族化が地縁・ 血縁を崩壊させています。「困ったときは、お互いさま」や「持ちつ持たれつ」の相互扶助の慣習そのものがなくなっているのです。追い打ちをかけるように、未婚化、晩婚化や少子高齢化で、単身世帯が増え続けています。
さらに、労働者の非正規雇用割合が40パーセント近くまで増えてきたことで、職場内での共同体意識そのものが希薄化しています。家族・親戚、地域社会や職場内でも、相互に助け合う関係性が損なわれ、社会的に排除されて、孤立した人が増えているのです。
ただし、単身世帯でなくとも、悩みなどを気安く相談できる友人がなく、家族からも社会からも孤立した人が多くいます。