はじめに
世の中に数多くある不動産書籍の中で、この本をお手に取って頂き感謝申し上げます。
最初にお伝えさせて頂きたい事は、この本は不動産投資や経営のノウハウが詰まった本ではございません。その代わりに、賃貸アパート、マンション管理における現場で実際に起きたリアルな出来事を中心に綴っております。具体的には事件、事故はもちろん、様々なクレーム事案例、それらの解決方法など多岐にわたります。
家主様はもちろんの事、賃貸住宅にお住まいの方、同業の方々にも興味や関心を持ってお読み頂ける内容になっております。
私は21年間、中部地方にある大手賃貸不動産管理会社に勤務してきました。
常に現場で多くの家主様、入居者様、物件と向き合い、時には事件、事故、自然災害にも数多く対峙してきました。
振り返ると世間のGW休み、お盆休み、はたまたお正月休みの時でも気持ちが安らぐ時はひと時もありませんでした。一社員として7年間過ごした後、責任者として店の運営を任され、14年間逃げずに必死に邁進してきた自負もあります。そんな私の経験が少しでも家主様、同業者様、入居者様のお役に立つ事を願っています。
第一章 管理会社と賃貸物件
なぜ人は賃貸アパート、マンション経営をするのか?
今の世の中、どこを見渡してもテレビのCM、書籍やネット上で「将来安定な不動産投資、老後の生活費の足しにマンション経営をしましょう!」という類の謳い文句が溢れています。
正直それらの言葉に魅力を感じますよね。実際、世の中の人はマンション、アパートのオーナーをどの様に思っているのでしょうか? 第一に「お金持ち」、「毎月何もしなくてもたくさんの家賃収入があっていいなあ~!」という意見が大半だと思います。
この業界で働く前は私もそう思っておりました。しかし現実は大きく違っていました。
実は多くの大家さんは銀行などからお金を借り、毎月ローンの返済をしながら経営をしています。それに加えて毎月の家賃の管理や集金、空室があれば家賃収入が無い、時には滞納もある。トラブルや苦情処理もしなければいけません。
そして数十年かけてようやくローンを返済し終えた時には大体、大規模修繕でまた多額の資金を用意しなければなりません。
実はアパート、マンション経営はとても大変なのです。
ではなぜマンション、アパート経営をするのでしょうか? 従来のほとんどの方の理由は、税金対策のためでした。
「税金? 何の?」と思う方もいるでしょう。具体的には親より引き継ぐ土地やお金等の遺産に掛かる相続税や固定資産税などが挙げられます。
ご存知のように、昔から税法で親、祖父母より引き継ぐ一定以上の財産 『お金、土地、株』 などに相続税がかかり、国に税金を支払わなければなりません。そこで少しでも支払う税金を少なくさせるためにあえて借金をする。そのためにマンションやアパートを建ててきた方が多いのです。そのためマンション経営を