【前回の記事を読む】一通のショートメール…45年前の初恋の人からだった。彼は私にとって初めての「男」で、そして、37年前に私を捨てた人だ。

胸騒ぎ

最初の結婚は、2年足らずで終わった。私は小さな府営住宅に住んでいる両親の元に出戻りした。別れた時、私は妊娠しており、シングルマザーで娘を産んだ。

父は脳梗塞で自宅療養中、母には父の介護と私の娘の世話をしてもらっていたので、働き手は私一人だけだった。

必死になって働いた。35歳の時に病気になった。生活費の面倒を見てくれるということで2回目の夫(東野)と内縁関係のような付き合いを始めた。入籍はしなかった。

娘が東野に馴染めず、私は自宅と東野の家を往き来する二重生活をしていた。東野は私より23歳年上で離婚歴があった。飲食店を3軒経営する会社の社長ということもあり羽振りは良かったが、私以外にも付き合っている女性は何人もいた。

私は両親と娘の生活費を工面する必要があったので、女性関係は見て見ぬふりをしていた。生活の面倒を見るといっても、ただお金を貰うだけでは愛人関係みたいで自分のプライドが許さなかった。

また、東野は計算高い男であったため自分の経営する飲食店で私を働かせることで店が繁盛すると考えていた。水商売ずれしていない素人がお客には新鮮味があるというのが理由だった。私は昼間訪問看護師として働き、夜は東野の経営する飲食店で働いた。

東野とは女性関係のことで何度も別れてはヨリを戻し、かれこれ20数年が過ぎた。

もう一切関わるのは止めようと思い、今の病院に転職したのをきっかけに神戸に転居し、携帯番号も変えた。

今の病院に来て1年目の春、突然東野から病院に電話がかかってきた。

「やっと見つけた。ワシは癌であと1年ぐらいしか持たないから最後は一緒に暮らして欲しい」