「今時、いい男がまだそんなことをしているの、あきれるわね、それで……」
「彼の母親が過剰なくらいまで彼に思い入れがあるみたいで、何でもお節介をやくようで母親に対して〝イエスマン〞なの、だから結婚についても恋愛を認めない考えで息子の相手は親が見つけるというらしく、彼は何一つ自分の意見が言えない人なの」
「あきれたね、でもこれまでの二年間は無駄なようでいい勉強になったと思うしかないね、きっとその母親も昔若い頃に恋愛に苦い経験があったのよ」
「確かに、相手の人を好きになってしまうと負の部分を敢えて見ないようにしているところがあるからね、母親は自分の体験から学んだのかもしれないね」
美代子はここまで話をすると、すっきりした気持ちになったみたいで、これまで一人で重苦しい思いを抱いていた荷物をやっと降ろすことが出来てほっとしていた。
「美代子は、三十の大台に乗ったのよね、年をとるのが早いね、いいことがあるから焦らないことよ」
と慰めとも又後が無くなったともとれる微妙な言い方をした。
「大台にはとっくに乗ってるわ」
「悪かったわね、年を思い出させちゃって」
「お父様にはこの件は内緒にね」
「分かったわ」
美代子自身、この日を境にしてこの問題を封印した。