デビュー以来、その映像的な表現と、人の心の深淵を抉るようなストーリー展開で読者を魅了し続ける由野寿和(ゆうやとしお)さん。
【前編】では、作家としてのルーツや創作の秘密を紐解きました。【後編】では、由野さんの作品が持つ魅力の核心に迫ります。
読者を惹きつけるストーリー展開の秘密
――「読んでいると先が気になって一気に読み進めてしまう」という感想が多い由野さんの作品ですが、読者を惹きつけるために意識していることはありますか。
「ここで終わるの?」という感じで章を終わらせたり、次の展開が気になる状況で区切るということは心掛けていますね。
――章の区切り方が比較的細かいのは、読みやすさのためでしょうか。
場面の切り替わりは意識しています。特に『アイアムハウス』では、こうかなと思ったら違うというように読者の期待を裏切るような展開を意識しました。
――重厚感があるのに、サラッと読めてしまう不思議な感覚は、構成によるものなのですね。執筆しているときに楽しいと感じる瞬間はありますか。
先に頭の中で映像として、「こういうイメージで、こういう作品で、こういうふうに終わる」というのがあるんです。それをどう文章で表現するか、という自分との戦いになるので、いかに文章を上手くしっかりと作っていけるかが課題です。そこを描き切ったときは、もちろん達成感があります。
――ある程度映像としてのものがご自身の中にあって、それを文章で描写していき世界観を出していくというスタイルでしょうか。
そうですね、はい。
――「映像が浮かびやすい」と感じるのは、そういう書き方だからこそかもしれませんね。では、執筆中に文章が出てこなくて詰まってしまったときはどのように解消されていますか。
これも一概には言えないんですが、普通にリフレッシュという感じで1回休みにするというパターンもありますし、あとはもう自分をなんとか奮い立たせて「やるぞ!」というときもあります。どちらのケースもうまくいったり、いかなかったり…。僕自身何が正解かはわからないので、その時々に合わせてやるという感じです。
――どういうスタイルがいいのかを模索しながら書いているということでしょうか。
はい、まさにそうですね。
――ご自身の作品について、どのような手応えを感じていますか。
めっちゃ良いものができたと思っています(笑)。さすがにそう思っていないと、「読んでください」とは言えません。一番重要なのは、読者に伝わるものになっているかどうかだと思っています。その辺が鈍くなりやすいので、独りよがりにならないよう、編集者の方からフィードバックを受けながら作っていくことの重要性を感じています。
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