編集者と二人三脚での作品作り

――編集者とのやり取りで、印象に残っていることはありますか。

これまで誰かに自分の文章を読んでもらうことがなく、本当に初めての経験だったので、編集者の方に読んでもらった時はドキドキしましたね。

――編集者と一緒に作品を作り上げていくという過程の中で、編集者がいて良かったなと思ったことや視点はありましたか。

普段あまり本を読まない人や最後まで読み切ったことがない人、そういう人たちにも読める作品、触れられる作品を作りたいという思いがありました。

そこをしっかりと理解していただいた上で、独りよがりにならず、読者から見てここで感情移入ができるか、面白い展開になっているのかなど色々とお話をさせてもらいながら、それこそ章の作り方をどういう構成にするかなども話をして作り上げていきましたね。

――目的意識を共有した上で、同じ方向に向かって色々とアドバイスを受けながら作り上げていったというようなイメージでしょうか。

そうですね。

――編集者とやり取りをしたなかで、作品が変化したなど印象に残っているものを教えてください。

『再愛なる聖槍』は、元々観覧車ジャックの解決で終わるはずでしたが、主人公のその後を描いたストーリーを加えた方がいいのではというご提案をいただき、エピローグとして加えたことで作品が深まりました。

『アイアムハウス』では、最初地名は「十燈荘(とっとうそう)」という名前でしたが、編集者の方が「十燈荘(じゅっとうそう)」と間違えて読まれて(笑)。それが逆に良いアイデアになったというエピソードがあります。

――1作目を受けて、2作目を意識的に変えたところはありますか。

『再愛なる聖槍』は「家族」をテーマにしているので、ある程度温かさがあり、比較的マイルドな作品だと思います。ただ、もっと本格的なミステリーが読みたいという読者の声に応え『アイアムハウス』では、よりセンセーショナルなシーンや、ミステリーらしいシチュエーションを取り入れました。

――作品を通して、読者に伝えたいテーマはありますか。

大それたことを言うつもりはないのですが、読者の日常の中で、面白いポイントの一つになってくれれば嬉しいなと思っています。読者の方のレビューなどを読んで、作品を深く読み解いてくれているのを見ると、本当に嬉しいです。

――意図したものと違う受け取られ方をしたことはありますか。

いえ、そんなに大きなギャップはないですね。主人公を含め登場人物は皆、挫折したり、失敗したり、不完全なんです。完璧なものよりも、不完全さを大事にしています。