多忙な日々の中から生まれる物語
――現在働きながら執筆活動をされていますが、メリットやデメリットはありますか。
働いていると、色々な人と接する機会が増え、新しいインスピレーションを得られることがあります。例えば『再愛なる聖槍』を執筆していた10年前とは価値観も変化しているので、その当時と今感じているものには結構ギャップがあります。
そこは日常での価値観が作品に反映してくる部分だと思います。それから僕は、毎日3時間執筆するというようなスタイルは苦手で、どちらかというと、締め切りに間に合うように集中して書くタイプです。
――物語の構想が頭の中にあって、それを一気に書き上げるという感じですか。
そうですね。書き始めがスムーズにいけば、勢いよく書き進められますが、なかなかうまくいかない時は、止まってしまうこともあります。
――ミステリー作品は、一つの結末に向かって進んでいくと思いますが、最後の展開は、書き始めから決めているのでしょうか。
基本的な流れは決めていますが、それに紐づく物語やキャラクターは、書いているうちに変化することが多いです。キャラクターが途中で生まれたり、状況が変わったりするのは、経験上よくあります。最近では、あまり固めずに、変化を楽しむようにしています。
――登場人物のキャラクターは、どのように作り上げているのですか。
主人公はしっかり固めていますが、それ以外のキャラクターは、物語の流れの中で生まれることが多いです。
――主人公には、モデルとなる人物がいるのでしょうか。
過去に出会った人の中で個性的だったり、面白いなと思った部分を参考にすることもありますが、基本的には、物語に必要なキャラクターをゼロから作り上げています。
――特に思い入れのあるキャラクターはいますか?
そうですね…、1作目の『再愛なる聖槍』ですと仲山ですし、2作目の『アイアムハウス』は深瀬です。2人とも主人公で刑事という役割ですが、似ているところもあれば違うところもあったりします。
どういう過去があり、どういう生き方をしてきたのかというところに興味を持ってもらえる、愛されるキャラクターにしていけたらいいなと常々思っています。
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いかがでしたでしょうか。由野さんが作家になるまでの軌跡、ミステリーに魅せられた理由、作品を生み出すためのこだわりなど、作品の魅力の一端が垣間見えた【前編】でした。
続く【後編】では、読者を惹きつけるストーリー展開の秘密、編集者との二人三脚での作品作り、そして今後の展望について、たっぷりとお届けします。乞うご期待ください!