ミステリーに魅せられた理由

――様々なジャンルがある中で、ミステリーを選んだ理由は何ですか。

大前提として、僕は人が好きなんです。人の感情や内面にすごく興味があって、それを描きたいと思った時に、ミステリーが自分のイメージに一番近いと感じました。元々は、爆発シーンなどインパクトのある映像を作りたいと思っていましたが、そういった行動には必ず理由があるはずだと考えるようになりました。

人と人との関わり、感情といったものを伝えたい、という思いが根底にあります。そこに、観覧車ジャックや高級住宅街といったユニークな要素を加え、エンターテイメント性も追求していきたいと思っています。

――『再愛なる聖槍』の「観覧車ジャック」や、『アイアムハウス』の「高級住宅街」など、舞台設定が非常にユニークですが、どのようにアイデアを得ているのですか。

基本的に、妄想が好きなんです(笑)。移動中や食事中など、常に何かを考えていて、それをメモしたりしています。そこから面白いアイデアを拾い上げて、ストーリーを膨らませていくことが多いですね。

――アイデアの源泉は、日常の中に潜んでいるわけですね。

そうですね。ただ、ストーリーの作り方は様々で、『再愛なる聖槍』は「観覧車ジャック」という着想から始まりました。観覧車は通常子供でも乗れる安全な乗り物ですが、そこに突然恐怖が加わるとどうなるかという感覚をエンターテイメントに落とし込みたかったんです。

『アイアムハウス』は、先にタイトルが決まっていて、そこからストーリーを構築しました。その過程で、高級住宅街や登場人物が出てきました。

――ストーリーの着想は、様々なんですね。

はい。

――印象的なタイトルにもこだわりがあるのでしょうか。

タイトルはとても大事にしています。ミステリー作品ですので、書店で表紙を見たときの第一印象と、読み終わった後の印象がガラッと変わる、という面白さを表現したいと思っています。

――『再愛なる聖槍』の導入部では、物語の核となる話が挿入され、それが最後に再び登場します。これは意図的にされたのですか。

はい。違和感のようなものを最後まで引っ張り、読者に何かを届けたいという思いがありました。

――『アイアムハウス』では、警察組織の人間関係や高級住宅街の特殊な雰囲気がリアルに描かれていますが、リサーチなどはされたのでしょうか。

舞台となる場所や人物のモチーフはありましたが、警察の管理体制や捜査の流れなどは、色々とリサーチしました。

―――『再愛なる聖槍』の観覧車の仕掛けは、現実的に可能なのかも調べられたのですか。

はい。あまりにも現実と乖離していると感情移入が難しくなると思うので、現実的に可能な範囲で肉付けをするように心掛けています。