(2)「永楽通宝」の旗印と通貨発行権
私:次は「永楽通宝」の旗印だ。「天下布武」の印判を使う頃から信長は「永楽通宝」の旗印を使い始める。「天下布武」と「永楽通宝」の旗印はセットなのだ。兵士には「織田に仕えればゼニがもらえる」。商人には「楽市・楽座は儲かる」。
N:「永楽通宝」の旗印にも「天下布武」同様の信長の決意が漲るのですね。
私:そうだね。米を基盤とする重農主義ではなく、商業を基盤とする重商主義国家を信長は目指す。そして「織田の永楽通宝」で国内経済を統一する。さらに行き着いた先が「通貨発行権を握る」=「贋金作り」だ。
N:え! 贋金?
私:明銭の「永楽通宝」ではなく「織田の永楽通宝」を贋金と刺激的な表現をしてみた。
N:信長の贋金の話をもっと聞きたいですよ。
私:信長は「織田の永楽通宝」の旗印で「これが織田のゼニだ」とピーアールする。
N:明銭の贋金が「織田の永楽通宝」なのですか?
私:そうだよ。「織田の永楽通宝」は贋金なんだ。贋金、贋金と、信長の「贋金作り」をおもしろおかしく矮小化してはいけない。「通貨発行権を握る」が信長の「贋金作り」の正体なのだから。
N:すごいなあ。「通貨発行権を握る」かあ。
私:3つ目の謎は永楽通宝の流通範囲の謎だが、「信長の贋金」についてさらに理解が進むはずだ。さて永楽通宝が主に流通しているのは東国(伊勢・尾張以東)で、まさしく織田・徳川以東なのだ。一方、西国は宋銭が流通する。信長は西へ、西へと侵攻する。そこに「織田の永楽通宝」(贋金)で攻め込み、宋銭を駆逐するんだ。
N:「贋金作り」は信長の専売特許なのですか?
私:そうだな。信長に限らず「戦費」の調達が為政者を悩ます。幕末、徳川幕府はフランスから戦費を調達しようとする。フランスは見返りに北海道の譲渡を迫る。慶喜は断念するが、もし慶喜でなければ……。
N:日露戦争での高橋是清の戦費調達の奮闘はドラマでみました。ロスチャイルドが……。
私:ヨーロッパ王朝は戦費の調達と引き換えにユダヤ資本の銀行システムを認可する。そしてアメリカ連邦準備銀行もアメリカの独立戦争が引き金で、同じ手口で、ユダヤ資本に乗っ取られた。
N:あれ? 永楽通宝の流通範囲の謎は解けましたっけ?