「幹也く〜ん、こっち、こっち」

美紀は突然立ち上がり、幹也に大声で手を振った。声を掛けられた幹也は驚くような顔を美紀に向けたが、側に座っていた美智子も驚いた様子だった。

「さっきの話、内緒よ」

浴衣姿の幹也が近づいて来るのを見て美智子は口早にそう囁いた。

「何だ、何か用か?」

真新しい浴衣を着た幹也はそう言って自慢気な視線を美紀に向けた。

「ここに座って」

美紀はそう言いながら敷かれたレジャーシートに幹也の座る場所を空けた。隣の美智子が露骨に嫌な顔をした。美紀はコンビニのビニール袋からファンタの蒲萄ジュースのペットボトルを取り出した。

「あげる。ここで一緒に見よう」

そう言った美紀から黙ってジュースを受け取り、幹也は美紀の隣に並んで腰を下ろした。

「浴衣、似合っているよ」

美紀が褒めると、幹也は照れたように笑った。しかし、ジュースを飲む幹也の浴衣の袖からチラチラと見える二の腕にはくっきりと赤黒い痣が二つほどついていた。美紀の胸がキュンと鳴った。

やがて花火が上がり始め、三人は黙って空を見上げた。その夏の花火の炸裂音は美紀の耳にはいつもの年より小気味よく響いた。

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次回更新は1月28日(火)、22時の予定です。

 

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