第三のオンナ、

まゆ実

かけようか、かけまいか。わたしは病院の待合室で悩んでいた。スマホの通話アプリには貴輝の名前が表示されている。なぜか、あれから音沙汰がない。

【会いたい】とラララインに打ってみた。

けれど、いつまで経っても既読にならない。同じ文章を携帯番号あてにショートメッセージと、スタスタグラムでダイレクトメッセージを送ったが返事はこなかった。どうしてなの? 

だから今、悩んでいる。

「城戸様」

女性事務員の甲高い声がした。わたしは受付に行き支払いを済ませて処方箋をもらうと、近くの薬局で薬を受け取った。

抗うつ薬。

医師によると、軽症のうつ病らしい。診察の際、ドッペルゲンガーにまつわる伝説を説明し、第三のオンナに狙われていると打ち明けようと思ったがすぐに思い改めた。重症と診断されるに決まっている。

医師には抑うつ気分を引きずっていて、出席しないと単位をもらえない講義を除き二週間ちょっと大学を休んでいること、食欲がない、眠れない、イライラする、疲れやすい、といった症状を訴えた。

わたしは、まさか自分がうつ病になるなんて思ってもいなかった。今ごろサークル仲間は何をしているのだろうか。

特にイガラシ君。あなたは幹事なんだよ。幹事が仲間の心配をしないというのはどういうこと? 千春がいるから仕方がないかもしれない。イガラシ君は千春に夢中だし。

きっと千春はあることないこと言いふらして、わたしという人間をおとしめているのだろう。もし人格さえも否定するような発言をしていたら、訴えてやろうと思う。