第一歌

不吉な夜。人型の樹々。ウォーキングの果てに見知らぬ森に辿り着く。

ダンテ2は人生の道半ば、五十五歳の年に暗い森の中にふたたび迷い込む。

なにしろ人生百年といわれている時代。五十五歳でもまだ、人生の半ばなのだ。

何か随分前にも森で迷い、相当酷い目に遭ったのだが、定かではない。

森を出ようとすると、ヒョウとライオンとウルフに妨げられる。

絶望のとき、ウェルギリウス3と出会う。彼がダンテを案内して、地獄と煉獄を見せてくれるらしい。

これまた、昔こんなことがあったとデジャブを感じるのだが、常用の睡眠薬がまだ効いているせいで、頭がボーッとして思い出せない。ダンテは消化器内科で治療中なのだ。もしかして悪性? まさかねぇ……。

時は西暦二〇二三年、春。日本。

わずか二日間の物語である。

人生の道半ばで、

正道を踏み外した私が、4

目を覚ましたときには暗い森にいた

あらあらまたもや夢の中

睡眠薬が効いていて、

頭がボーッとしています

その眠たさたるや魑魅魍魎の如くなり、

しかし、そこで巡り会った

幻覚を語る為に、そこで会った男のことをまず話そうと思う

どうしてそこに入り込んだのか、うまく言えない

当時の私は、現実に夢中だったから、

夢中で現実の世を生きていたから

森の中で私の心は恐れおののいていたが、

しかし、子宮口を過ぎた辺りから

私はとある土手の麓に辿り着いていた

目を開けると、土手の形状が

もう暁光に明るく包まれているのが見えた

あらゆる道を通して、万人を正しく導く”存在”の光であった

すると、哀れな様で過ごした夜の森

私の心にわだかまっていた

不安な気分も、少しは治まってきた