第3章 国によって異なる永住権

2. 各国の永住権比較

英国

旧英領植民地、イギリス連邦の英国臣民の移民に大きく門戸を開いた英国は、移民の増加によって人種差別や暴動を招きました。またEUの中でも経済の立ち遅れた東欧諸国などからの流入も多く、就労の機会減少を危惧する国内の労働者などの反発もあり、それがEUからの離脱の要因にもなったといわれます。

これらを背景に、移住の容認、永住権付与にはその条件の厳格化が進んでいます。規制条件の変更が続いていますが、永住権の対象者に英国の経済発展への貢献を求める姿勢が前面に出ています。

雇用による取得
・ビザを取得した上で合法的に5年間継続してイギリスで就労している人。労働許可ビザ保有者、投資家、報道関係者、アーティスト、高度技術者などが対象です。

長期滞在による取得
ビザの種類に関係なく、合法的にイギリスに10年以上滞在している人。あるいは合法、非合法に関係なく、イギリスに20年以上滞在している人を対象とします。

投資による取得
・100万ポンド(1億4000万円)以上を投資し、5年間継続したことが条件です(個人名義の資産が200万ポンド以上であれば、投資額を借り入れすることができます)。
・500万ポンド(7億円)以上を投資し、3年間継続した人。・1000万ポンド(14億円)以上を投資し、2年間継続した人。

タイ

人口6900万人のタイには、日本の進出企業や日本食店も多く、住みやすさを感じます。しかし移住や永住権取得のための条件は厳しく、日本人の永住権獲得は年間100人の各国取得枠にも達していません。

基本的にはタイ人の配偶者がいるか、就労証明書が必要で、タイ語の会話能力も求められます。取得には時間がかかり、費用も比較的高額です。

就労による取得
・3年間以上労働許可証を保持していること(就労ビザを取得)、1カ月8万バーツ以上の勤労収入があること、2年間分の所得申告書(年間10万バーツ以上の納税が必要)が提出できる人。

タイ人の配偶者がいる人
・配偶者がいる場合は1カ月3万バーツ以上(2年間分)の収入証明などが必要になります。これらの永住権すべてを合わせて日本人には年間100人にしか付与されません。

投資による取得
・1000万バーツ以上の株式や国債などへの投資・資本金1000万バーツ以上の会社の取締役

韓国

朝鮮戦争後、労働者の海外流出が盛んだった韓国は、少子高齢化になり20世紀末から労働者不足を招きました。同時に韓国人と結婚する主に東南アジアの女性も増え、海外からの労働者とそれら女性たちとその家族の保護のため「多文化家族支援法」などの法整備を実施しました。

各自治体レベルでも移住者への受け入れ体制が整備されています。韓国の人口は5145万人(2017年)、そのうち外国籍移民は225万人といわれ、増加のペースは高まっています。

長期滞在による取得
・一定の語学力があり、合法的に韓国に2年以上滞在している人(一時帰国や海外旅行を除く)。

投資による取得
・50万米ドル(5500万円)、あるいは200万米ドル(2億2000万円)以上を投資し、各一定以上の韓国人を雇用すること。自己の才能、能力による取得
・博士など一定の学位、著名な功績をあげた人。