第3章 国によって異なる永住権

2. 各国の永住権比較

⓮フィリピン

最後にフィリピンの永住権を紹介します。これまでの各国の永住権よりも、少し詳細に説明します。その理由は本書の冒頭で述べましたように、フィリピンの永住権が現在の各国の制度に比べ、効用や利便性、コストからみて一番利用しやすいものと考えるためです。

まず取得条件を確認し、その優れた利便性、効用などは第4章以降で確認してください。

フィリピンは世界有数の労働者の海外輸出国です。海外で働く人(OFW=Overseas Filipino Workers)からの送金がGDPの10%とも言われ、国の経済を支えています。それと同時に同国では外貨獲得政策として、海外からのビジネスマンやリタイアした人々の受け入れも積極的に展開しています。労働雇用省(DOLE)など関係機関も整備されています。

これらの機関が関与する許可、承認システムは、外国人雇用許可証を筆頭に、さまざまなものがあります。

フィリピンの永住権と一口にいいますが、その種類や取得方法も多岐にわたります。その中でも代表的なものとして「クオータビザ」、「SRRV」、そして今回ご紹介する「APRV(APECO特別永住権)」があります。

クオータビザは、ビジネスなど活動の自由度が高く、取得後の維持条件もほとんどありません。日本、アメリカ、ドイツの三カ国に対しそれぞれ年間50人の枠が認められています。

SRRVは特別居住退職者ビザといわれます。リタイアした夫婦や家族がフィリピンに住み、その年金などを使ってもらうことを目論んだ制度ですが、30代でもこの制度の適用が可能です。

APRVはオーロラ特別経済区が取り組む振興開発事業プログラムの1つとして承認される特別永住権で、取得の容易さ、利便性からみて今一番お勧めするものです。

これら3つの永住権を、それぞれの必要手続きごとに比較検討します。

①取得に関する年齢制限

他国の永住権の取得に際しては、一般的に成年に達した人でないと取得できない、あるいは高齢者の取得はできないなどの条件がついたりしますが、フィリピン永住権の中でも年齢制限がないものもあります。

SRRVの場合35歳以上
クオータビザの場合20歳以上
APRVの場合年齢制限なし

となっています。