第五章  思い出

その定点カメラはテレビ局所有の物なのか、毎朝の人出や交通量などを紹介する一コマとして決まってこの時間に流された。

画面が切り替わって映し出されたアナウンサーが、七時台のニュースの始まりを告げると、口早に何かを伝えていた。

「さっき映ったの、やっぱりまた流すみたいよ。嫌ねえ」

嫌とは言いながらも興味津々の体の女性患者が、身を乗り出すようにしてテレビを覗き込んでいた。

『映像の準備ができましたのでお伝えします』

七時台のアナウンサーがまるで世紀の瞬間を捉えたかのような勢いで、先程の映像を再度流すと言っていた。

それはどうやら交通事故の様子で、その定点カメラが捉えたものらしかった。正面に見える橋桁の上には、高速道路が左右に走っていた。その下道の交差点へは、左右の流れが止まろうとしているにも拘らずに、大きく車体を傾かせたトラックが侵入してきた。そこへ画面正面から左折するはずの道を逃したのか、不自然な弧を描く一台のバイクが侵入してきた。

『ここですね』