遠い夢の向こうのママ 毒親の虐待と夫のDVを越えて

私がどうあがいてもかなう訳がなかった。よくそんな小さく非力で弱い者へ暴力なんか振るえるものだ。ある意味感心する。

彼はよくある、暴力を振るった後に態度が急変して優しくなって「もう二度と殴らない」などと謝ってくるタイプではなかった。100%自分が悪くても私が謝らないと仲直りができない。気に入らないと手が出る。

彼は「もう別れる、もう離婚だ」と言い続け、長い時は半日~一日喧嘩し、私が謝り続けてやっと許してくれる。

でも許した時の態度もすごく偉そうで「さっさとそこらを片づけろや、ボケ」とふんぞり返っていた。

その態度が気に入らず、私が彼を睨みながら片づけると、また「なんだその反抗的な目は!!」と、また殴る蹴るの暴力が始まる。とにかく凄惨の一言に尽きる光景だった。

次の日はベッドから全く起き上がることもできないほどの肉体的ダメージだった。私はどんどんその肉体的ダメージから受ける精神的ダメージを、自分でも気がつかない間に自分の中に溜め込んでいた。

そして彼はいつも「俺は強いんだ」みたいな言動を私にして強がっていたが、実際にはチンピラのような男に絡まれるとシュンとなり、自分より明らかに弱いような相手にはものすごく強く当たっていた。

その点、私は逆で、そのような偉そうな人には同じかそれ以上強く立ち向かい、喧嘩し、自分より弱い立場の人にはできる限り穏便に優しくするよう心がけていた。

そもそもそういったズレが後々大きな亀裂となり、離婚に至ったのではないかと思う。彼は所詮、偽善だったのだ。

彼は内弁慶なので、外では愛想がとても良かった。暴力を振るう人には全く見えなかった。なので顔は殴ってもビンタだけで、握りこぶしで殴ることはなかった。