遠い夢の向こうのママ 毒親の虐待と夫のDVを越えて

その後私は短大を卒業し、就職した。

ママ達が立ち上げた会社も小さいながらに順調に進んでいたが、ある日、現場の事故で会社の若い社員の男の子が意識不明の状態になってしまった。

ママはひどく動揺し、「今の会社を辞めて、うちの会社に入ってこっちを手伝って欲しい」と言うので、すぐに会社を辞めてママの会社に入社し、その男の子の回復を願った。

が、その祈りも虚しく、男の子は一週間ほどで亡くなってしまった。亡くなった男の子は結婚したばかりで、子供も生まれたばかりだった。

お金の都合か、葬儀場などではなく、マンションの1階の集会場のような部屋を借りてお通夜やお葬式をすることになった。

お通夜の席に、少ない親戚や社員一同が集まった時だった。

すると突然ママが「あたしの葬式はこんなしみったれたとこでして欲しくない~!! 嫌だ~!! あたしはこんなとこ、絶対嫌だ~!!」と大声で叫んでいる。

私は凍り付いた。

そして慌ててママのところへ走って行って、ママの手を引っ張り、部屋の隅っこに連れていき、「ママのお葬式は私がちゃんとするから、今日と明日、二度とそんなこと言っちゃダメよ!!」と怒るとママは「わかった」とうなずいて大人しくなった。

本当にいつなにを言い出すかわからない人だと、冷や汗をかくと同時に、次はいつなにをしでかすのかと恐ろしくなった。

それでも、たったひとりのママを守ってあげなくてはという想いの方が強かった。

そしてその頃の私の私生活はというと、卒業してすぐ入社した会社で知り合った男性と20歳の頃からお付き合いをしていた。