付き合って1週間くらいから「結婚しよう」と言われ、「私のことなにも知らないのになに言ってるの」と呆れていたが、毎日毎日なん度も言われる内に、洗脳されるかのように「私はこの人と結婚するんだ」と思うようになっていった。

とても明るく、面白い人だったが、急にスイッチが入って怒り出すことがあった。

なにがスイッチとなるのかわからなかったので少し怖かった。

付き合って3か月くらいしたある日、地下鉄のホームで言い争いになった。

すると人目も構わず突然彼は私を思いきりビンタした。

私はフラフラとよろけ、泣きながら歩き去ろうとした。

彼は慌てて謝って引き留めに来た。

そして仲直りした。

それがDVの始まりだと、私はその時、わかっていなかった。その頃はDVという言葉もまだ浸透していなかった。

暴力というのは、振るわれるごとにひどくなる。

前回より手ぬるい、ということはない。必ず前回よりもひどくなる。

彼は訳がわからないことで突然怒り、怒りが一定に達すると手を上げる人だった。

そして手を上げる度に暴力の度合いはひどくなっていった。

でも私はその時、「この暴力を私が直してやる」という変な使命感に燃えていた。

そのため、「いつか直る暴力のことは誰にも言わないでおこう」と、人には内緒にしていた。

私達はよく喧嘩し、暴力を振るわれていたが、たまに「喧嘩した~」と友達に相談しても、暴力を振るう彼と別れるのか続けるのかを決めるのは自分しかいないのだと悟った時、友達に相談するのをやめてしまった。

もちろんママにも言わなかった。言ったら即別れさせられると思っていたからだ。

私は完全に孤立してしまった。

ふたりの毒母から離れ、やっと彼と幸せな家庭を築けると思ったのに、それも叶わないのか。

なぜ私は心の底から信頼できて頼れる人に巡り合えないのか。

結婚前提の彼(夫)というのは、世界中で一番信頼でき、支え合える仲なのではないのか。この人もまた、信じられず、頼れないのか。