「女子なんか今いいから」
思わず本音が出た。これは硬派ぶって出た発言でもなんでもない。まずは男だ。目立っている男と仲良くなって、大学で一番目立つグループを作らなければ。完全な一軍のグループとして大学生活を送っていれば、女子は後からついてくる。
これは僕が華麗な大学デビューをかまそうと決めたときに立てた作戦だった。家を建てるときだってそうだろ? まずはしっかりとした基盤から。
いきなり無理をして可愛い女の子に絡みに行っても、空回りしたときのダメージがデカいし、他のイケてる男から調子に乗ってるヤツに思われても損しかない。
まずは自分たちがイケてる男グループを作って、そこの中心になる。全ての話はそこからだ。
「それでは皆さん、決められた席に着席をお願いします」
アナウンスに促されて、僕らは学部ごとに分けられた自分達の席へ向かった。
僕らは農学部。宮崎大学は、農学部、教育学部、工学部に分けられており、その中でも農学部が一番偏差値が高い(別のキャンパスである医学部は除く)。
国立大で、さらにその中では偏差値が高い学部だけあって、農学部にはより派手な感じのヤツがいなかった。勉強ができそうなヤツらばかりだ。
だがその中にも数名、目立っている感じのヤツがいる。この数名さえ、なんとか仲間に取り入れることができれば、僕はこの学部で一番になれるだろう。
一人、大声で関西弁で喋っているヤツがいた。身長が高く、スタイルがいい。オシャレなパーマを当てていて顔もイケメンだ。左耳には高そうなピアスをしていた。この中では抜群に垢抜けている。一目で童貞じゃないのも分かる。
すでに何人かがそいつを中心に輪を作って話していた。アナウンスに促されて、みんながそれぞれバラけて着席していく。
そいつが僕の後ろに着席してきた。最初のターゲットはこいつだ。
堂々と。友達を作ることなんか慣れてる感じを出して。最大限にイケてる人生を送ってきた感じで。
地元の胡散臭い美容師の人に染めてもらった、角度によっては七色に見えるという派手な髪をなびかせながら。僕は、ゆっくりと笑顔でそいつの方へ振り返った。