なぜこんな結末に?納得できない確定調書に説明を求めるが…

すると、調停委員の1人が説明を始めた。

「薬師さんは、法律上の権利である江藤さんの全遺産の2分の1が相続対象になってないので、納得できないのだと思いますが、厳密に言うと、江藤光夫さんの死亡時に同じ住所に生活をしていたのは妻の金子さんだけであり、薬師雄二さんは違う住所で生活をしています。そして遺産相続の分割協議を、薬師さんの承諾が無い状況で行われた妻の金子さんに全遺産を相続した手続きは同じ住所に生活していたので有効であり、その後で発見された金六万円は違う住所で生活している薬師さんが相続するという事です」

それを聞いて雄二は反論した。

「おかしいじゃないですか。この調停以前に私の姉が死亡した時に、江藤光夫と薬師ひろみ、いわゆる実の両親が遺産相続対象者となりました。その時、あの男は妻の金子さんと再婚して同居しており、姉とは同居していませんでした。一方の薬師ひろみは姉と同居しておりました。戸籍等を確認してもらってもその事は証明できます。先ほどの厳密に言う論理だと、姉と同じ住所に住んでいた薬師ひろみが全遺産相続される論理になります。それでも、実際の遺産相続では、あの男と母のひろみで姉の全遺産の2分の1ずつを遺産分割されて相続しました。それなのに、今回はあの男が死亡した時点で同じ住所に同居していたから、私の承諾なくあの男の全遺産を相続させる手続きが有効だというのなら、論理が誤っていると考える事ができます。その事についてどう思われますか?」

調停委員の1人は、淡々とした口調で返答した。

「薬師さんのお姉さんの遺産相続について、私どもは詳細を知らないので何も言える事はありません。そして、今回をもって本案件の調停は終了致しました。本日はお疲れ様でした」

退出を指示されて雄二は、少し怒った表情を見せながら裁判所から出てきた。