「お宅の雑草が伸び放題でウチの敷地内に侵入してきたのよ」とか。

「空き家にネズミとゴキブリが増えたみたいでウチも被害を受けているのよ」とか。

父が亡くなって一年あまりでこんな事態になるなんて。すぐに実家を適切に管理しないと老朽化による倒壊の危険が増し、さらなる害獣・害虫の温床になるのは間違いない。

なんとかしなければ……そう思って、私は故郷に戻ってきた。

幸い、ひとつ年下の妻曜子と小学五年の一人娘芽衣(めい)は反対しなかった。二人とものんきなところがあってせかせかした都会の生活よりも田舎暮らしのほうが性(しょう)に合っているかもしれないという。

妻も娘も高望みしない性格で「生活に困らないだけのお金があれば充分よ」と言ってくれたときには涙が出そうになった。

理解ある家族のため、私は職探しに藁(わら)にもすがる思いだった。大学時代のアルバイトは図書館。居心地が良いものだから社会に出ても図書館司書の仕事しか就いたことがない。

給料は安いが、各種社会保険は完備。雇用期間の定めはあるけれど、原則更新。非常勤職員は地位が不安定とはいえ、よほどの事情がない限り解雇になることはない。

なのに、まさか私が雇い止め解雇の通告を受けるとは……。

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