第一話 ハイティーン・ブギウギ ~青松純平の巻~
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俺が国道沿いにある大型ディスカウントストアで若葉と健太を連れて買い物していたところ、赤星先輩、美保、蘭と鉢合わせした。
「奇遇だな、ウブ平」
「ホント奇遇ね。ウブ……じゃなかった純平くん」
「おっさん元気?」
蘭が悪気なく言い、上目遣(づか)いで見る。
「こら、おじさんだろ」
赤星先輩がたしなめると、蘭は「はーい」と大人(おとな)しくなった。
「先日はありがとうございました」
俺は赤星先輩に会釈するや、ふと思った。やっぱり二人は付き合っているのでは? 良い雰囲気なのだ。
「お父さん、ウブ平って呼ばれてるの?」
若葉が「ププ」と笑う。
赤星先輩に心を開いていたはずの健太はどういうわけか俺の後ろにサッと身を隠した。
はたと俺は思い出した。突然、すすり泣き始めた健太を。
「この間、やっぱり健太に何か言ったんですよね?」
俺は疑わしい目で見ると、赤星先輩はとぼけた顔をした。
「ちょっと励ましただけって言っただろ。何も心配いらないって。オレはただ、お前の武勇伝を教えただけさ。それに比べれば、事故など恥ずかしくない。元気を出せってな」
「武勇伝?」
若葉が真っ先にくいついてきた。赤星先輩が意味深(しん)な笑みを浮かべる。「なんとコイツ、中学二年にもなってうんこを漏らしたんだよ」
「それは言わない約束でしょ!」
忘れもしない文化祭が終わった直後の、生徒会執行部の打ち上げ。不満たらたらで飲まずにいられなかった俺は、コーラを浴びるように飲み、結果、みなの前でお腹をゴロゴロと下したのだった。
それ以来、赤星先輩が中学を卒業するまで言いなりになったのは言うまでもない。
「やだーお父さん。ありえなーい」
若葉が腫れ物に触るように、しっしと手で追い払う仕草をする。
「そんなこともあったわね」
美保は思い出したような顔になり、「ふふ」と微笑(ほほえ)む。
それにしても、この事実を知って健太が泣く理由がわからない。俺は率直に尋ねた。
「なあ、健太。どうして泣いたんだい?」
「そんなお父さんの子なんだなって思うと、なんか悲しくなって」
遺伝と思われたのかもしれない。俺も悲しくなる。
と、千香子が手洗いから戻ってきた。
「赤星先輩じゃないですか!」
千香子は赤星先輩の顔を見るや、懐かしそうに顔をほころばせた。「変わらずにカッコイイですね!」
「おー柳原(やなぎはら)。久しぶりだな」
千香子の旧姓は柳原。
「ていうか、お前ら夫婦だったの?」