私の勉強したい気持ちが復活してきた。なんとか本のページをめくってはみるが、五分もしないうちに頭が痛くなる。すぐに横になりたくなる。でも、先生は「なるべく頭を上にしたほうがいい」と言うので、無理やりでも起きて本を開いた。

「もうすぐ退院できますよ」と言われた時から、頭に水が溜まってくるようになった。直接、注射針で水を抜く。また一週間もしないうちに水が溜まる。その繰り返しで、なかなか退院できなかった。

今頃は忙しいだろうなあ、と家を心配する余裕も出てきた。夏場の忙しくなる前に家に帰れる、とばかり思っていたのが大間違い。その年は、例年になく猛暑だった。ハウスでの収穫は大変なことだ。ヘビが大嫌いな娘が、泣きながらナスやピーマンを収穫しているという。

朝市でキュウリやスイカを売っているわが家の子供たち。以前はそんなことは考えられなかったことだ。そして、八十才のおじいさんが洗濯機の使い方を覚えて、自分の洗濯物は自分でしているという。

夫や子供たちはどんなに忙しくても、わずかな時間を作っては病院に来てくれた。毎日のように誰かは来てくれた。たった十分間の面会しかなくても一時間以上も車を走らせて来てくれた。

なのに、気分が悪い日は、「帰って!」と言ったそうだ。これも、私はあまり覚えていないのだが、後になって夫がよく言うひとつだ。

おもしろいのは、私が個室であることをいいことに、夫が床で大の字になって寝ていくことだ。時には、私をソファに座らせて自分がベッドで寝るのだ。

娘も「ここにいる時は別世界だ」と言ってホッとした顔つきをする息子もそうだ。「ああ、眠たい・・・」と言う。そして、私の大好きなケーキをいっしょに食べて行く。

みんな、長い時間はいられないのだ。帰り道にまた一時間以上もかかるからだ。そして、野菜の収穫に袋詰めや配達と仕事は山ほどある。夫が痩せるのも無理もない。家族み~んな痩せる思いをしていたのだ。

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次回更新は10月14日(月)、11時の予定です。

 

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