『ハッチャン商事』の事務所に赴くと、「オウ、これかこれかァ」などと言って、いかにもという風情のおっさんが荷物を受け取り、『ハチ』と配達票に乱暴にサインした。
こんな体験談だった。
「確かに怪しいね、その箱の中身。たぶん拳銃だよ」
据わった目をして、瞳子さんは呟いた。
「なんのために?」
すると彼女は怪しく瞳を輝かせ、「殺人を依頼されたんだよ、そのハッチャン。ヤクザ屋さんに」
「かもな。で、殺した証として殺された人間の一部をダンボール箱に詰めて、ヤクザ屋さんに宅配で送り返す展開なんてどう?」
ぼくも怪しく目を輝かす。なかなかイケてるサスペンスストーリーではないか。
「それでも配れますか?」
「来た荷物を配るだけだから、あんがい平気だけど」
チラっと、コタツの横にあるダンボール箱に視線をやったら、「なーに怪しんでんの?」頬杖を突いてオレオをかじる瞳子さんが、薄く笑って言った。「何かヤバイもの入ってるとか、思ってない?」
「そうじゃないって。でもさ、前から考えてたんだけど、これってもしかして、いつも同じ物じゃない?」
「あ、やっぱバレてた?」
【前回の記事を読む】配達ついでに訪れる彼女の部屋は午後からの仕事の活力を取り戻す場所になりつつあった…