五 午後……十二時四十分 ドリームランド内社員食堂
東京都城南区にあるドリームランドは、テーマパークとしてはかなりの老舗だ。
広さは東京ドーム約二個分、有名なテーマパークとしては小さめの規模である。美しい夜景が見えるが、海風が強く、観光地としての人気は少し弱い。
老朽化した施設は錆びが目立ち、アトラクションやキャラクターショーのレベルもさほど高くはなかった。どこにでもあるメリーゴーランド、コーヒーカップ、大したことのないジェットコースター……。
そんなドリームランドの特徴は、四季折々に咲き誇る美しい花々と、冬期シーズンに広がるイルミネーション、加えて優秀なスタッフ達だ。
そして、この遊園地の運営元は、全国にいくつものビルを保有する大企業『帝国不動産』だった。
親会社の資金力で建設された日本最大級の展望型観覧車『ドリームアイ』が大人気アトラクションとなり、ドリームランドは老舗遊園地として復権を果たした。
そのドリームランド内『愛の台地』から右に逸れて、『宝の洞窟』を抜けた先にあるレンガの壁。そこを横に入ると社員食堂がある。見かけはドリームランドの世界観を取り入れてはいるが、中は至って普通の食堂だった。
【前回の記事を読む】「観覧車ジャック?聞いたこともないな」信憑性に欠ける。だが、観覧車が故意に停止され、墜落させられていたとしたら…
次回更新は10月15日(火)、20時の予定です。