まだ小規模な電気が残っているのだろうか?

恵は〔眠いわ〕と言い残すとあたりに沈黙が流れた。

首謀者として逮捕された三崎学、桐鈴子。枝木郡司は『人工知能を使ったテロ』と公開され背後関係に与党の関与を匂わせるとこの政権の逃げの姿勢はさらに激しくなった。

第八章 前に

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啓介は学校にも行ってないニートであったが今回の功績とハッキング能力を認められ正式に警視庁の情報部に職を置くことになった。

放送でチャリオットに抵抗したハッキングの本人として報道や記者を賑わし、そのときのOLの佐崎恵に注目が集まった。

40歳でも未婚でありこれを期に西井啓介は佐崎恵と付き合いだした。

恵と呼ぶたびにパソコン画面のプログラムの恵と試験管の人間を思い出す。

何事も何かを乗り越えなければ動かない。

これは愛なのか同情なのかわからなくなるがそれでも人は生きるため前に進む。

アルゴス

第一章 プロローグ

佐々木昇は生まれてきた自分の子供を恐ろしげに見る。

太ももから見ているつぶらな瞳。

つま先にある鼻と二の腕の膨らんだ肌の下には胃袋に内臓には二つの心臓。

この子は未分化細胞の暴走によるアルゴス・ウイルスに犯されている。

アルゴス・ウイルスは成長した哺乳類には感染しても変化はない。

もう成長が終わっているからだ。

しかし、感染した者が気づかず性行為をしてしまうと生まれた子供は生まれながらにアルゴス・ウイルスに感染して身体のあちこちに作られるはずの身体の部品が本来あるべきではないところに作られる。

佐々木昇は身体中の目を指先で閉じさせ「おやすみ」と言うと子供の首を絞めて殺した。

そうしてナースに「息子が死にました。……いえ、私が殺しました」と自首した。

医師であるリヒターは世界各国に広がった疫病に恐れをなした。

致死性はない。しかし、ウイルス対策をせず生まれた子供はまさに化け物になる。

ある子は頭から生えた3本目の腕に脳細胞を蝕み、成長しても知能はないだろう。

何処にどのような臓器が現れるかわからないアルゴス・ウイルス。

貧困に苦しむ人々に多いこの病気は予防接種をしていないからだ。

少子化なのにまともに少子化対策をしない政府はもちろん予防接種にも消極的だ。

日本が今や貧困国といわれるのはこのウイルス感染が物語っている。