第一章 地球の診断
一・四・三磁気異常
日本付近では、方位磁石を使うとN極が北の方を向きます。
しかし、その向きは北極の方向ではなく、東京付近では約七度、北海道では約九度くらい北極の方向からずれています。また、東京では磁石の針は水平だとしても、それを北海道に持って行くとN極側が下がって傾いてしまいます。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか。
今の地磁気の分布は、地軸(北極と南極を結ぶ軸)より十度くらい傾いた、北がS極で南がN極の棒磁石を地球の中心に置いたときの磁気の分布とよく合っています(図1─8)。
この棒磁石の地表への延長(地磁気北極)が地理的北極と一致していないことが、方位磁石のN極の方向が北極の方向と一致しない原因です。このずれのことを偏角といいます。
また、磁力線の向きは、日本のような中緯度地域では、北側に傾くことになり、北極に近づくほど傾斜が増して、北磁極では垂直になります。この傾斜を伏角といいます。岩石の中に磁気を保持し、磁石になる強磁性鉱物が含まれると、鉱物が生成されるときのその場所の地磁気の方向に磁化します。
つまり、鉱物がそういう方向の磁石になるということです。
磁石の強さは、鉱物の磁化のしやすさ(磁化率)により決まります。そういう鉱物を含む岩体が地下にあると、地磁気と合わせて図1─9(a)のような磁場が地表に現れます。そこを南北方向に横切って地表で磁気の強さを測定すると、(b)のようになります。
岩体の南側(赤道側)では、地磁気と岩体による磁気とが同じ向きなので強められますが、北側(極側)では、それらの向きが互いに反対なので強さが弱められます。
したがって、磁化した岩体が地下にあると、地表での強度分布に強弱一対の異常が現れることになります。このような地表で測定される磁気強度から地下の磁化の強さの分布を求める方法は三・四で説明します。