第五章 健康改革
(2)国民皆保険制度の改革
それでは国民1人あたりの医療費はどれほどの額になるのだろう。まず75歳以上の1人あたりの平均は、2017年度というやや古いデータであるが92万2000円と驚くほど高額である。75歳以上の国民1人あたりに92万2000円かかっていることになる。
ちなみに、65~74歳までには73万8000円、45~64歳までは28万2000円、15~44歳が12万3000円、0~14歳が16万3000円となる(厚生労働省「統計情報・白書」による)。総額で43兆円を超えるのだ。日本の国家予算が100兆円を少し超えるくらいであるから、4割を超えるのである。
医療費の増大は国民に重税感をもたらしている。43兆円を超える額を国民が負担しているのである。それらは公的医療保険として大きく分けて国民健康保険税と社会保険の中の健康保険料の2つにより徴収される。なお、規模は小さくなるが船員保険、共済組合なども公的医療保険に含まれる。
特にここ30年、40年の間で問題になっているのは少子高齢化がますます深刻化して高齢者の医療費が増大し、税金を納める現役世代、要するに実際に働いている人たちで支えきれなくなるのではないかという危惧が現実のものとなってきているのだ。若い方々が沢山子供を産んでくれれば問題ないのであろうが、出生率は下がる一方である。
2020年の出生数は前年より2万人以上減少し84万832人となり1899年の調査開始以来最も少なくなってしまった。子供にお金がかかるようになった今、若いお父さん、お母さんが出産を控えてしまうのであろう。高齢者を支えなければならない若者が減る一方で、医療保険制度の行く末は不透明さを増している。
それでは、国民皆保険制度を今後も維持していくにはどうしたらいいのか。