第1章 夫婦の問題
(5)世界一のセックスレス夫婦
▼EDの原因
現実にセックスができない場合をED(イーディ)(勃起不全)と呼びます。EDには、身体になにがしかの問題があってセックスできない器質性EDと、主に精神的な問題から引き起こされる心因性EDがあります。
心因性EDは勃起機能に問題がないのですから、正確には「する気が起こらない」状態です。EDの大半が後者の心因性EDに由来しています。EDについては自著『老いない性ライフ 2つの重要なホルモンで活き活き』(西村書店 2017年)で詳しく述べていますが、ここで簡単に触れておきます(図参照)。
器質性EDは、勃起機能に必要な男性ホルモンのテストステロン、ペニスとの連絡をつかさどる血管や神経のどれかひとつでも障害されると引き起こされることになります。器質性EDのひとつ、男性更年期障害は、テストステロンが明らかに減少することで男性らしさが失われる病気です。閉経によって女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少して発症する女性の更年期障害の男性版ともいえます。
ただ、女性が一般に50歳前後の閉経を契機とするのに対して、男性の場合は、テストステロンが20代からなだらかに減少しているために、30代で発症する人もいれば、70代になっても発症しない人もいます。女性だけでなく、男性にも更年期障害があることを認識してください。
その他、生活習慣病の肥満、高血圧、糖尿病、脳卒中やさらにはうつ病、前立腺肥大症や認知症などの病気でもEDを発症します。この中で、前立腺は、40代以降加齢とともに肥大傾向を示し、やがて尿の回数が多くなる(頻尿)などの症状が現れる前立腺肥大症となります。
こうした前立腺肥大症だけでなく、うつ病や男性更年期障害なども、病気がそれほど進んでいない段階では、明確な自覚症状に乏しく、EDの原因としてひとつの病気を特定しにくいことが少なくありません。実際問題として特に肥満などの生活習慣病が根底にあると、男性更年期障害、うつ病、前立腺肥大症などの病気が発症しやすくなって、単独の病気に複数の病気が重なってEDの原因となっている場合も多いのです。