「体に悪いな~。連れてくる」
「紹介しろ」
ゆりの前に立ったが無視している。面白いな。
「ゆり」と呼んだらびっくりして顔を上げた。
「俊さん!」と飛び付いて来た。う~ん、愛おしい。
「どうしたの?」
「二階のカフェに近藤といる。君がいたのに気付いて降りてきた。行こう」
「私、こんなお洋服で……」
「いいんだ。ゆりはいつも可愛いから、おいで」と二階へ行った。
「近藤だ。いつも話している親友だ」
「初めまして、ゆりです」
「ゆりさん、僕は初めてではないです。二回目です」
「えッ?」
「五か月前に声をかけて見事に振られました」
「ええー、そうですか。すみませんでした。私は男性が嫌で声も聴きたく無かった頃です。俊さんに出会えて、少し良くなりました」
「今井との用事は済みましたので、失礼します。今度、ゆっくり食事でもしましょう」
「ええ、ありがとうございます」
今日の待ち合わせは二人で婚約指輪を取りに行く約束。
「今井様、いらっしゃいませ。お待ちしていました。今日は副社長もいます。少々お待ちくださいませ」
「今井さん、いらっしゃいませ」
「おおー健、お邪魔しているよ。妻になるゆり」
「初めまして、ゆりと申します。よろしくお願いいたします」
「今井さんからゆりさんの事よく聞いています。お会い出来て嬉しいです。岸田健といいます。いつも可愛がってもらっています。今井さんは人を裏切らないです。尊敬する人です」
「今日は褒めるなぁ。何も出ないよ。アハハハ」
指輪を受け取って食事へ向かった。
食事も済んで、
「改めて。結婚して下さい。僕があなたを守ります。一緒に年を取りたい。死ぬまでそばにいてほしい」。
「喜んで、お受けいたします」
そしたらケーキが出てきた。
オーナーの山田哲也さんからのサプライズだった。俊さんもびっくり。
「今井さん、おめでとうございます。予約表見たら今井さんの予約があり、挨拶しようと思ったらプロポーズしていて、急いでケーキを準備させました」
「てっちゃん、ありがとう。僕も素敵な妻が出来た」
俊さんって人望がある。やっぱり素敵な人。美味しくいただき店を後にした。
夜は今日の為に買った素敵な白のロングスリップ。記念日。優しく、包まれるように愛してくれた。幸せ。
【前回の記事を読む】「彼女、知っているよ」親友の男と付き合っている彼女の意外な接点とは...?
次回更新は9月14日(土)、20時の予定です。