第一章 クルマを運転するときの心構え

冬支度に対する考え方

私は長年、東京都内でタクシー運転手をしています。東京都は決して豪雪地帯ではありませんが、毎年、12月中旬から3月いっぱいは、スタッドレスタイヤにしています。しかも、2年で新しいタイヤに交換しています。

「雪が降ったらタイヤを換えればいいのでは?」

そんな声も聞こえてきそうですが、私はお乗りいただいたお客様の大切な命を預かる仕事をしています。いつ雪が降るかはわかりませんから、念には念を入れてタイヤを履き換えているのです。

もちろん、2年ごとに新しいスタッドレスタイヤに交換すれば、それなりのコストはかかります。だからといって、もし雪が降らなかったとしても、そのコストが無駄だったとは思いません。

みなさんはお客様を乗せることがなくても、助手席や後部座席に夫や妻、両親、子ども、恋人など大切な人を乗せることがあるはずです。その大切な人を守るためにも念には念を入れてもいいのではないでしょうか。もし冬支度しないまま、雪が降ったときにスリップして事故を起こしたら後悔してもしきれなくなるでしょう。

そして、何よりもこうした準備は自分自身を守ることにつながります。クルマの冬支度にかぎらず、十分すぎるほどの慎重さをもって運転しても、私は何も損することないと考えているのです。