若い娘がひどい目にあっていたという話の方が、おもしろいのかもしれない。

そこにつけ込むように、蒐優社は『告壇』だけでなく、婦人雑誌にまで、わたしを貶める記事を顔写真入りで出してきた。

わたしがとんでもない不良娘で男と遊んでいたとか、虚言癖や盗癖があるなどと、デタラメが書かれていた。

わたしの悪口はよほどおもしろいのか、誰かが仕掛けているのか、騒ぎはどんどん大きくなって、他の雑誌やラジオにまで取り上げられるようになった。

わたしはちょっとした有名人になった。すぐに忘れられるだろうが。

黍良の母や霧坂のおばさんは心配してくれたが、わたしは平気だった。

こういう事態はあらかじめ敬明から聞かされていたし、もうなにも言うことができない同僚たちを想えば、誹謗中傷など、どうということはなかった。

わたしにとって意外だったのは、黛さんの反応だった。白い眼で見られるかと思ったが、非難するどころか、逆にわたしをかばってくれた。

「あたしはあの万由香李をよく知ってるんだよ。子供の頃からね。すぐバレるような嘘でも、平気でつく子だった。というより、自分がしゃべった嘘と現実の区別がつかないんだね。とんでもない娘だよ。

今度のことだって、金をもらってしゃべっているのは、万由香李の方だろ。デパートでいろいろ高い買い物をしてるのが、噂になってるんだよ。おかしいだろ。どこにそんな金があるんだい。

いずれろくなことにならないと思ってたけど、とうとう、ああいうことをするようになったかねぇ……」

星炉さんもわたしを心配して、こんな言葉をかけてくれた。

「中傷する人は声が大きいから、たくさんいるように感じるけど、実際には、きちんと真実を見ている人もたくさんいるのよ」

わたしは、星炉さんも中傷されてひどい目にあった経験があるのかな、と思った。

それにこれはわたしの勘だが、星炉さんは城屋の事件について、裏で誰がどう糸を引いているか、知っているのではないかと思った。