「了解。洋子の未知数の恋が弾けますように」
と裕子が意味深な事を言ってくる。
弾けてたまるか! もぉー、違うって言っているのに、でも言い返すのも面倒だ、寝る。
そんな私の気持ちを乗せたまま新幹線は京都駅に着いた。
まず当初の計画通り、駅近くのレンタル着物店で夏気分の浴衣に着替える。
殿はどうするかと思いきや、こちらの方が落ち着くと言って進んで変身していた。
周りの雀どもが、「凄く似合う~」とか「カッコイイ」などとピーチク言っている。まっ、確かに凄く格好良かったよ。
荷物は店に預け、身軽になった私たちは京都御所に向かうのですが、そこはそれ、社会科見学みたいに学校で来ている訳ではないので、そっちのスィーツ店、こっちの土産物屋と立ち寄りながら、綿あめ片手にプラプラ行くので御所に着くのに時間が随分とかかる。
こんな感じの私達に付いてきて、殿は不満に思っているのではと見てみると、案外楽しそうにタマの入ったバスケットを持ちながら辺りの様子を興味深そうに見ていました。
それでも御所まで来ると、さすがに引き締まった顔になり、何かタマと話をしているみたいになりました。
(蔵人、考えておる事が聞こえているか)
(はっ、聞こえております)
(我には尊くあらせられる所であるが、話に聞くばかりで参るのは初めてじゃが、そちにとっては懐かしい所であろう)
(そう仰って戴き恐縮ではございますが、記憶を留めての生まれ変わり、想いは薄れて参ります)
(そうか、ならば共にかつての天子様の御座所を拝見させて戴こう)
殿とタマが脳内会話をしているところへ、
「水野君、何か困っている。……早く行こう」
はぁーっ、恐れを知らない裕子。殿の黙考を破る。もう放っとこうよ。
「裕子、水野君は御所が目的だから、じっくり見たいんじゃないかな。私達は私達で見て回ろうよ」と私が言うと、
「そっかぁ、……でも洋子本当に二人にならなくていいの?」と裕子が改めて聞いてくる。