愛しき女性たちへ

「初めまして。ケンジと申します。

六十一歳。 既婚。 

都内の大手金融機関で不動産関係の仕事をしています。

身体を動かすことが好きで、若い頃はバスケットボール、テニス、ダイビングなどをしていましたが、最近は読書、海外のテレビドラマ、食事とお酒などすっかりインドア派になってしまいました。

何しろ美味しい食事とお酒を頂いているときが最高に幸せで、恵比寿、神楽坂、銀座などによく出掛けます。ご一緒頂ける大人の女性とお会い出来れば嬉しいです」

 

ケンジという名で登録したのは本名を使ってはいけないというルールがあるからで、女性たちも様々な記号や絵文字、ニックネームなどを多用して自分の命名に凝っている。

プロフィールに顔や全身の写真を載せている女性は二割くらいで、あとの三割はサングラスや写真の加工アプリで雰囲気だけを出し、五割以上は写真は載せていない。

知り合いや家族に見つかるとまずいし、勤め人であれば仕事の関係者に身バレするのを避けたいだろう。

もちろんオトコもそうだが、秀司は顔だけをスマホで隠し、鏡に映ったジャケパンスタイルの全身写真を載せることにした。いい歳なので雰囲気だけでもわからないと誰も興味を持たないだろうと思ったからだ。