メキシコ国境警察 PART14

2020年2月

未だにウイルソンの身分証明書をわたしは手にしてない。最初にウイルソンから送られてきた修正された免許証以外は。

この頃になってわたしはCompanyに、ウイルソンの事、まだウイルソンの身分証明書も手にしてない事を話した。

ウイルソンがシリアにいた時、彼の荷物をわたし宛に送る事でわたしの住所を聞いてきた日、彼は自身の運転免許証をわたし宛に送ってきた。

その免許証はカリフォルニア州で発行されているかのように修正されていた。

カリフォルニアで発行されている免許証は水色。

彼から送られてきた免許証の色はグレー。

そして彼の免許証の住所欄の枠の中には、ビバリーヒルズと記されている。本来その枠には本人の現住所が記される。

さらにわたしはCompanyに、ウイルソンとは実際はまだ会っていない事を話した。

Facebookでウイルソンから友達リクエストされて以来のLINEだけの交流。

ウイルソンの現実の様子はわたしには全く見えない事を。

Companyはわたしに言った。

ウイルソンはCompany宛に、彼自身の証明書の代わりに彼の亡きお父さんのID(身分証明書)を送ってきている、と。

Companyは彼のお父さんのIDをわたしに送ってきた。Companyいわくウイルソンは確かな人だよ。ウイルソンはお金持ち。

ウイルソンは人気ドクターだよ

Wilson is well popular doctor.

荷物の受け取りは諦めないほうがいいよ。

数日後CompanyはウイルソンのID(身分証明書)を見つけたと報告をしてきた。

荷物の外側のポケットにウイルソンのIDと指輪が入っていたとの事。

CompanyはウイルソンのIDをわたしに送ってきた。

わたしは今、ウイルソンのIDと彼の亡きお父さんのIDを保存している。それだけはずっと大切に保管しよう。

結局ウイルソンはヨウコがメキシコ警察への支払い能力がない事を知ってわたしの所に戻ってきた。

彼は連日電話の向こうで泣いて、わたしにメキシコ警察への支払いを哀願する。

ここまで乗ってきた船。彼を助けてやろう。

わたしはまたもや彼にほだされた……バカだなぁ。

荷物の為にかかる費用の支払いはまた、今、始まった。

メキシコ警察への送金の仕方は移民局や裁判所の時と同じ現金パック。

Companyから送られてきた届け先はニューヨークの個人宛住所。指定された宛先に各1回ごとに$6,500を4回に分けて(合計約270万円)送った。

Companyの指示によると使う箱はギフト用の小さ目の箱がいいとの事。パック作りしている間はほのかに快感を感じる。

―ウイルソンの為にしている。