会社から帰宅後、就寝するまでの大半の時間を掲載の準備に充てた。千恵は、

「今が売り時、他の人も同じことを考えているから、急いで商品を掲載しないと……」

約一カ月の間でほとんどのテキストやテストを売り切った。

「結構、稼げたから、私の医療費のたしになったわね」

値段はいくらでもよかった。千恵が、がんという病に冒されながらも、何かワクワク感を感じ取ってほしかった。

義姉が二月に千葉県から東京都に引っ越しをした。何かお手伝いできないかと家族で引っ越しの手伝いをする予定だったが、千恵の体調が悪く、逆に迷惑をかけてしまった。

「この辺りは、パパの会社にも近いし、駅近で、彩ちゃんが行く学校もずっと今より近くなるから、引っ越しするならこの辺りがいいな」と千恵は独り言を呟いていた。私は、

「だめだめ、都内に引っ越しする余裕なんて我が家にあるわけないだろ」と言ってはみたものの、羨ましい気持ちはあった。

その頃から、痛みで横になる時間が多くなり、食事を作るのもままならない状況となっていた。スーパーに行って出来合いのものや総菜を買って食べることが多くなった。手術を待っている時間は特に長く感じ、早く当日がこないものかと願っていた。

病気が見つかるまで、平日はほとんど家族三人で食事をしたことがない。残業や会社の人たちとよく飲みに行った。千恵は、

「飲むのも、仕事のうち」