そのうち嫁も根負けして一緒に買いに行こうと市場に行きかけるが、三分の一もいかんうちに歩くけんようになる。そのうち歩いてみせるわ。

勝手気ままが出来んのも辛い。うちはおやつでも食べたい時に食べたいだけ食べる主義やのに、嫁ときたらおやつは午前と午後一回ずつ持ってくる。

窮屈や。食事前におやつを食べると、なるべく食べんといてと、うるさい。孫たちもこううるさくては可哀想や。孫たちが小さい時、おやつやりすぎてよう文句言われた。

それと、火が使えんようになったのも不便や。何度も鍋を焦がしているので、危ないと言ってガスコンロもなくなっている。電子レンジや電気ポットは性に合わん。

毎日シャワー浴びさしてくれるし、その都度洗いたての着替えを用意してくれる。毎日着替えるのもったいないと前のを着ようとすると叱られる。

ああ窮屈、窮屈。はよ自分で好きなようにしたい。

外に出ると隣が煙草屋や。長いこと辛抱してたけど、とうとう買うてしもた。うっかりテーブルの上に一本だけ置いていたら上から下りて来た嫁に見つかってしもた。

「あら、また吸い出すの。せっかく止めたのに」と、がっかりした声で言うので、「いや表に出たら家の前に落ちてたんや」と言うと、そう、そんなら捨てようねと言ってゴミ箱に捨ててしまう。箱はベッドの下に隠してあったので安心していたら、掃除の時見つけて持って行ったらしい。

晩方、息子が、「おかん、煙草拾ったらしいな。また吸い出すとあかんから俺もらっとくわ」と例の煙草の箱を見せて言う。噓ばれたんやろか。それからなんべんも見つかる。その都度拾ったと言うが、嫁は信用していない様子。