第一章 嫁姑奮戦記

おばあちゃんの心のつぶやき

退院後、何から何まで嫁の世話にならんといかんのは辛いというか窮屈で仕方がない。これまでは何やら言うても聞き流していたが、この頃は肝心なことまで忘れてしまうので自分でもあきれる。

それでも嫁は辛抱強く毎日言う。うちやったら放っとくけどな。

うちはおかまいなしのほうやから、汚れ物でも何でも押し入れやタンスに放りこむ。これがうち流のやり方なんやから放っておいたらいいのに。押し入れやタンスが汚れ臭くなるのが嫌なんやそうな。ひとのタンスや放っといてくれ。

一番辛いのは大好きな買物に行けんようになったこと。手押し車は恰好悪いし重いし、今まで使っていたようなショッピングカーが欲しいと言ったら無理だと言われる。

「そんなはずないわ。今までなんぼでも行けてたんやから買うて来て」と言うが、「そんならお隣で借りて来てあげるからそれで歩いてみて」とショッピングカーを借りて来てくれる。

引っ張って歩くが、どうも脚が痛くて市場どころかすぐ近くでも駄目だ。「ほれ、見てごらん。納得した?」と言う。「この次は歩ける」と、うちにも意地がある。

近所の人もやってきて、せっかく良い手押し車があるのにこのほうがうんと楽やよと口々に言う。あんなかさ高い車誰が使うかいな。第一恰好悪いがな。

それから度々ショッピングカーを買うてくれと頼んだが、その都度隣のを借りて来て歩けたら買うと言う。しかし思うように歩けないのだから情けない。