第1章 試行錯誤の毎日─リハビリ・介護生活から現在まで─

在宅復帰のためリハビリ専門病院へ

救急指定病院で妻は緊急入院から3週間にわたって急性期治療を受けました。そして引き続き在宅復帰をめざして、在宅療養支援病院に転院することになりました。

救急指定病院で退院手続きを済ませて、手配してあった民間の福祉タクシーに二人して乗り込みました。妻は車椅子に全身を固定され、ワイヤーで車の中へ引き上げられ、私は妻が動かないよう乗車中もずっと支えていました。運転手の手際の良さには感心しました。

こういう需要もきっと多いのだろうと、私は初めての体験をしながら思いました。その頃私たちは名古屋市内に住んでいました。転院先は、自宅から最寄りの地下鉄とJRを乗り継ぎ岐阜駅まで向かいます。

岐阜駅からは病院のバスを利用して、自宅から2時間ほどのところに病院はありました。病室は広く、大きな窓からは遠くに伊吹山、付近には広々とした田園風景が眺められます。

自宅の近くにも立派な病院はありましたが、街中よりも山が見渡せるような風景のところがいいという妻の希望を叶えたかったので、県外ではありましたがその病院を選びました。それには救急指定病院の担当医から言われた言葉が、決め手だったかもしれません。

「ご本人は、この病気になってとてもショックを抱えています。ご家族の見舞いなどを考えるとできるだけ近くのほうが都合はいいのですが、患者さんの希望を受け止めてあげることも今後の治療には大切になります。お二人でよく話し合って決めてください」

私たちにとっては患者に寄り添うあたたかなアドバイスでした。

転院生活もやや落ち着いた頃、介護用品を買い集めて見舞いに出かけたある日のことです。