第1章 試行錯誤の毎日─リハビリ・介護生活から現在まで─

在宅復帰のためリハビリ専門病院へ

数日後、岐阜駅前の旅行会社の店頭に並んでいたパンフレットスタンドに目が留まりました。そこからいくつか抜き取り病室に持っていきました。

リハビリが大変そうだと聞いていたので、気晴らしにでもなればいいと考えていました。もし可能なら退院後に二人でどこか旅行に出かけたいという期待も微かにありました。その数日後、今度は妻が遠慮がちに話しかけてきました。

「クルーズのパンフレットがあったら、いつでもいいから貰ってきて」

休憩室の雑誌か病室のテレビを観て、何か思うことがあったのかもしれません。次の日に、いくつかパンフレットを抱えていきました。実際に出かけることはないでしょうが、想像しているだけでも楽しい時間になればいいと。深刻なのにどこか呑気な私たちでしたが、退院後の暮らしについて問題も抱えていました。

その頃私たちは、親が残してくれた一戸建てをアパートに建て替えその一室に住んでいました。その隣の敷地に親が所有する賃貸アパートがあったこともあって、老後の生活に備えて収入を少しでも確保したいと考えていました。賃貸アパート経営で、それがかなうかもしれないという淡い期待を抱いていた頃です。